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その2適性検査の傾向
ここでは、東京都立・区立の公立中高一貫校で、2006度に出題された適性検査の中から問題の傾向を見ていきます。まず言えることは、選択肢を選ぶだけの簡単な問題は、出題されないということです。全体的にみると、算数・社会・理科を組み合わせた総合的な問題が多く見られます。また、課題に対し「自分はどう思うか」といった考えを述べていく作文も多数出ています。また、ほとんどの問題は会話形式で進み、問題文自体が長いため、読み取る力が必要になってきます。典型的な例として、桜修館中等教育学校を見てみましょう。
1.桜修館中等教育学校の場合
(1)適性検査
適性検査は、大問が2題、小問が7題で構成されています。そして社会科のテーマが大きく取り上げられました。例えば、大問1は水をテーマにし、水道使用量の表や降水確率のグラフなどからデータを読み取るものでした。同校では、出題の基本方針も公表しており、それによると大問1の出題の狙いは次の3点です。
- 課題を的確に把握し、
解決するための分析・考察・判断ができるかをみる。 - 資料を読み取り、
自分の意見を論理的に述べることができるかどうかをみる。 - 身のまわりの現象に関心をもち、
積極的にかかわろうとしているかをみる。
また大問2は、学校の教室の配置図を見ながら色々なことを考える問題でした。具体的には、登場人物の会話から学年と組を当てたり、教室を回る順路を考えたりと、場合分けや推理する力が求められていました。また、その中には歴史の登場人物についてクイズを作るなどの問題もあり、社会科についての知識も問われました。
(2)作文
『未来の学校』を考えよう!という作文コンクールのポスターを見て、自分の考えを書く問題が出題されました。文字数は500~600字で、身近な題材の中から課題を見つけ、情報を整理し、自分の意見を正しく表現できているかなどが問われました。
2.問題の傾向
(1)「社会問題」についての出題
公立中高一貫校の出題傾向のひとつとして、身のまわりの社会問題が取り上げられるというケースがあります。その場合のキーワードは、「環境」「国際化」「福祉」「少子高齢化」などです。前述の桜修館の問題は、やはり環境に関連する「水」がテーマでした。また、白鴎高校附属中学校では、次の2つの問題が出ました。これも「環境」や「国際化」に関連したものです。
- エネルギー対策の会話をもとに「電気料金の値上げ」の効果と
問題点を考える。 - 国際文化交流について書かれた2000字程度の文章を読み、
国際交流の課題と解決策についての意見などを書く。
小石川中等教育学校では、各国の貿易額や国際観光収入のグラフなどからデータを読み取る問題が出ました。また、日本文化の素晴らしさを外国人観光客に伝える提案などを書く問題も出ました。以上のように、グラフやデータをまず把握し、次に社会問題に対して自分の意見を書くというパターンが多く見られます。社会問題を取り上げた問題は、身のまわりに起こっている出来事への興味を含め総合的な力をみることができるため、今後も頻出が予想されます。
(2)算数との組み合わせ問題
算数分野の問題は、都立・区立の5校すべてで出題されており、全国でも多くの学校で出題されています。特に両国高校附属中学校の「適性検査Ⅰ」は、算数分野が大部分を占め、難易度の高い問題が並びました。それぞれの大問を一見すると「自家用車の所有台数」「読書」「部首などを組み合わせる漢字パズル」「宅急便の料金表」と、国語や社会などの教科を取り上げているように見えます。しかし、いずれも算数との組み合わせで、自家用車を持つ人の割合を計算したり、場合分けを考えるなど、算数分野での力が大きく問われました。
九段中等教育学校では、「発光ダイオードは電力消費が少ない」という話をもとに、発光ダイオードを使った信号機は、従来に比べてどれだけ電気代が節約できるかを計算する問題が出ました。また白鴎中学校は、縦横4マスの数字パズルを応用して、漢字の四字熟語を考える問題が、さらに先述の桜修館では、大問2で「場合分け」について考える問題が出題されました。この分野も頻出しています。
(3)その他
行動計画を立てる問題
九段中学校では、行動計画を立てる問題が出ました。「みんなにわかりやすく伝えるには、どんな図やグラフにすればいいのか」、「博物館に調べに行くには、どういう経路で行くとよいか」などを問うものです。この出題の意図は、グループ活動の中で、自分たちで問題点をみつけ、集団をリードしていこうとする姿勢や意欲をみるものです。まさに、公立中高一貫校らしい問題と言えます。
聞き取り問題
また、最近増えているタイプの問題に、放送による聞き取り問題があります。両国中学校の「適性検査Ⅱ」でも、聞き取り問題が出題されました。聞き取り問題は、放送を聞きながらキーワードとなる部分のメモを取り、意見をまとめるものです。公立中高一貫校は、相手の話に耳を傾け、内容を把握する力を重視していて、今後、全国で増えていく可能性があります。
公立中高一貫校のホームページでは、過去問題を掲載している学校が多く見られます。どのような問題があるかぜひチェックしてみてください。