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その4公立中高一貫校が目指すもの
1.考える力の育成
東京都立をはじめ、多くの公立中高一貫校では、2007年度の適性検査の問題で、出題の基本方針を公表しています。その内容は「思考力、判断力、表現力を活かして問題を解決する総合的な力をみる」というものです。思考力とは、つまり考える力です。これは、公立中高一貫校だけではなく、これからの時代、多くの場面で求められてくる大切な力です。そして、その土台となるのが読解力です。これについて、次の「国際学力到達度調査」の結果から考えてみましょう。
(1)「読解力」低下の衝撃
経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）が行う調査に、「国際学習到達度調査」というものがあります。これは、子どもの学力をはかるもので、2003年度の調査には、世界中から多くの国が参加しました。その結果、「日本の子どもたちは読解力が低下している」ということがわかりました。例えば、読解力の成績を６段階に分けた調査結果があります。この調査で日本の子どもは、読解力のレベルの最も低い層が、参加国の平均よりも多いことがわかりました。また順位も前回（2000年実施）の８位から14位に転落してしまいました。さらに自由に記述する形式の問題では、何も解答しない生徒が約40％に上ったという報告もありました。 文部科学省はこのような厳しい結果を受けて、「わが国の学力は世界トップレベルとは言えない」という認識を示しました。そしてこのことから、日本の子どもたちの「考える力」の低下も懸念されるようになりました。
(2)「考える力」を求める公立中高一貫校
さて、前述の調査で出された問題は、公立中高一貫校の受検問題と共通点があります。それは、「答えが一つに定まらない」問題が、多く扱われていることです。「読解力」とは、ただ単に読み取るだけの力ではありません。これまで日本の教育が定義していた読解力とは、「１つの正しい答えを探し出せる力」でした。ところが、この国際調査が求めた読解力とは、「自分の体験や知識を活用して、自分なりの答えを作り出す力」、つまり「考える力」をベースにしたものでした。日本は今、不透明な時代の中にあり、従来のような「いくつかの中から１つの正解を選ぶ」というような方法では対処しきれなくなっています。そこで求められるのは、これまで経験したことのない問題を、自分の力と頭を頼りに解決していく能力です。これこそ正に、公立中高一貫校が目指すものです。公立中高一貫校はリーダーシップを発揮し、人生や仕事の諸問題を自分自身で解決できる人材の育成を目標のひとつとしています。
2.各校の求める生徒像
各学校の教育方針も、以上のことを裏付けるかのように次の通りになっています。
- 「高い知性と豊かな感性・表現力を備えた国際社会に貢献できる生徒の育成。」（さいたま市立浦和中学校）
- 「未来を切り拓く意思と実践力を身につけ、リーダーとして活躍できる生徒を育成する。」（栃木県立宇都宮東高等学校附属中学校）
- 「（表現力、洞察力、論理的思考力、創造力など）総合的な人間力を備えた人材の育成。」（和歌山県立桐蔭中学校）
このことからもわかるように各校とも、自分で考え判断できる「考える力」を持った人材を求めています。
3.まずは「やる気」
実際に公立中高一貫校の現場で、校長、教頭先生に「考える力に加えて、どんな力をもった子どもたちに魅力を感じますか？」と質問しました。すると「意欲に富んだ積極性のある子ども」という答えが圧倒的に多くかえってきました。
例えば次の２つのタイプの子どもがいたとします。
- Ａ：学習はみっちりしてきたが、そつなくまとまったタイプ
- Ｂ：学習面では未完成な部分があるものの、サッカーなどの活動を徹底的にしてきたタイプ
このような場合、公立中高一貫校は、Ｂを合格させます。「やる気や考える力があれば、学習面の遅れは取り返せる」というのがその理由です。意欲や積極性が、入学するために必要なのはもちろんです。それだけでなく、入学後６年間の学校生活を中だるみすることなく乗り切るためにも「やる気」は大切なのです。
もちろん、合格するには「やる気」だけでは通用しないのも事実です。では具体的に、どのような受検問題が出題され、それにどう対応すればいいのでしょうか。それについては、次の「受検のための基礎知識」のコーナーで説明していきます。
